【所長のコラム】/鏡森定信

かかりつけ医としての産業医の主治医機能の深化を!

 コロナ禍を機にかかりつけ医が論議されている。我が国の労働者50人以上の企業では産業医はさしずめかかりつけ医であろう。
かかりつけ医について論議している社会保障審議会医療部会の資料では、高齢者の場合を想定した場合、その機能として①持病(慢性疾患)の継続的な医学管理、②日常的によくある疾患への幅広い対応、③入退院時の支援、④休日・夜間の対応、⑤在宅医療介護サービス等との連携、が挙げられている。これらの項目を産業医活動に落としてみると、①は健診と意見聴取、②は健康相談・保健指導、③は就労と治療の両立支援・復職、 ④は時間外・深夜業への対応、⑤は地域保健(医療・福祉を含む)との連携となろう。
しかし通常医療では患者と医師(医療機関)の間に契約関係はなく、また、複数の医師を受診している場合は、それを統括する主治医が普通は決まっていない。産業医では企業との間に契約関係があり、緩いが主治医機能も期待されている。
 多岐にわたりかかりつけ医に関して検討されており、この契約については、現状では患者はいくつもの専門分野の医師にかかっており、各受診者が複数の医師、あるいは医師群(法人など)と契約することなどが論議されている。英国でも1人の医師に登録するが、実際には専門の異なる数人からなる医師のグループ診療でかかりつけ医機能を果たしている。そこで対処できない場合に2次医療機関との連携が始まるシステムである。企業と契約関係にある産業医が様ざまな保健医療福祉機関と連携し主治医機能を果たすべく奮闘している。そのための支援体制の拡充も進んでいる。かかりつけ医の論議が進む中で産業医の主治医機能についても関心が高まろう。この機に産業医の主治医機能の深化を期待する。

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