【所長のコラム】/鏡森定信

運動習慣と精検受診に関する参加型産業保健活動 ―アクション・リサーチの視点ー

 令和6年3月に当センターも参加し開始から21年目になる産業看護研究会学術集会に出席した。発表の中に標記の2つがあった。前者は、社員がチームを組んでアプリを活用した運動習慣づくり、後者は対象者へのインタビューを組み込んだ精検未受診に関するものであった。通常、これらは、運動記録を提出してもらったり、調査票を配り精検受診の有無と未受診の理由を尋ねたりして実情把握の上、保健活動を評価・考察して終わるものが多い。
しかし、今回の発表では、運動習慣づくりへの自主的参加の継続・促進や精検についての被調査者との話し合う機会の導入といった、今日ILOも強く推奨している働く人たちの参加型の保健活動であった。職場の人たちとの相互のやり取りを組み込み、職場の健康づくりにつながる活動(アクション)がなされており、アクション・リサーチともいえる。
 いずれにしろ、実態把握にとどまらず、職場の健康づくりへの具体的貢献を組み込んだ工夫がなされており、これこそ現場の産業保健活動としての調査研究といえよう。
 このような働く人たちが参加した産業保健活動には、調査票の配布・回収そして分析・啓発だけでは成しえない、健康づくり進展の萌芽があるものと思っている。
 今回の発表会に出席し、アクション・リサーチそして参加型の調査研究が、現場の保健活動をやっていて楽しく、意義と実りの大なるものに導くだろうと改めて感じた。

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