【所長のコラム】/鏡森定信

新型コロナウイルス禍のインフルエンザ激減にみる対策の3ポイント

 私が往っている2つの老人福祉施設では、昨年秋から今年初夏までのインフルエンザ流行期に患者が出なかった。日本の過去5年のインフルエンザ流行期の患者推計でも、例年1000万人台、昨年は1400万人超えで最多だったが、今期は700万人台前半で前期の半分で激減である。
新型コロナウイルスに対しては、3つの感染症対策のうち、①のワクチン等の予防手段がない現在にあって、②のPCR検査での感染者発見と隔離・治療などの感染源対策と、③の衛生消毒や3蜜回避などの感染経路遮断が対策の重点となった。これまでのインフルエンザの場合に比べて、換気、消毒、マスクの使用に加えて3蜜回避の徹底ぶりが大きな特徴で、これがインフルエンザの激減にも大きく作用したのであろう。
 新型コロナウイルスに対するワクチンに大きな期待が寄せられているが、これが全能でないことは、結核やンフルエンザを見れば明らかである。結核は、易感染性の年少者の就労規制や住居・栄養改善で抗結核薬が発見される以前に大きく減少していたし、インフルエンザはワクチン接種をしても完全には防げない。
 今回は感染経路の遮断の有効性が示されたが、特定の対策に限ることなく、3つの対策の組み合わせが必須である。

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