【所長コラム】鏡森定信

消極的放任型上司の「こんなはずじゃなかった」

 公務員の職場で目下ハラスメントを受けてないノルウエーの労働者2,273人を対象に、上司の部下に対する態度を評価してもらい、その後6か月間に発生したパワハラやいじめを回答してもらった調査(Skogstad, et al. J Occup Health Psychol.2007)がある。
結果は、直属上司が消極的放任型の場合は、そうでない上司に比べて4.28(95%信頼区間;1.29-14.2)倍その発生が多かった。これは、性・年齢、職種、教育歴、婚姻、慢性疾患、交代勤務、この間のライフエベントなど他の関連要因を調整した結果である。
パワハラの加害者の過半数が上司であることから、上司への禁止事項の徹底が過ぎ、ややもすると消極的放任型上司になりがちである。以前、M物産のスタッフのミーテングで“うちの部署は上下関係なく言いたいことが言えます“と明るい発言を耳にしたことがある。開放的な放任型であっても、マネージメント(現場の運営・管理)とリーダシップ(方向性・動機付け)があいまいな消極的放任型では、現場の混乱・困惑がハラスメントに繋がっていくことは想像に難くない。私自身、リーダシップ研修のないまま管理職になり随分大きな代償を払った。
新年度になり、新たに上司になる方も多い。我々の研修でも、上司を委縮させるのでなく自信をもって部下と関われるパワハラ防止研修に努めたい。

(令和2年4月号所長コラム)

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