【所長のコラム】/鏡森定信

事業所で全員にPCR検査をしたら安心か?

 新型コロナ感染症対策でPCR検査の普及が進められている。
これを事業所で実施して職場における感染者の発見や予防に役立てたいと考える人もいるであろう。しかしながら、これには厄介な面が生じることを知っておく必要がある。
 一つは、感染していてもPCR検査でその全員が陽性にならないことである。これまでの報告によれば、陽性に出ない割合は20~30%程度である。したがって感染の危険が高い濃厚接触や流行地が関わる渡航などでは繰り返し検査が行われる。すなわち1回の検査で感染の有無を断定できないからである。
 二つは、本当は感染していないのに検査で陽性に出ることである。これは疑陽性といわれ、これまでの報告では5%未満である。このご時世に、感染してもいないのにPCR検査陽性と出ればその後の生活の制限や精密検査など物心両面から大変なことになる。
所属部内で陽性者が出た場合や流行地に赴いて業務を遂行せざるをえないなど、感染リスクの高い場合には、その該当者全員にPCR検査をおこなうのが基本である。そのような場合では、検査陽性者や検査拒否者への対応なども一層重要となる。嘗て腫瘍マーカを職場健診で全員に実施したいと相談されたことを思い出す。

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