【所長コラム】鏡森定信

両立支援意見書の診療報酬 -上医医国?-

 治療と就労の両立支援で、とりあえずガンに限ってとはいえ医師の支援に関わる意見書が診療報酬に搭載されたのは画期的なこととして喜びたい。
 しかしながら、対象は産業医が選任されている事業所の労働者との制約には大きく落胆した。「格差是正」、「一億総活躍」などと唱道されている時代の流れに棹差すものと言わざるを得ない。
 このことに落胆するよりは、産業医の選任そのものが、50人以上の事業所のみに義務づけられている制度改革を改めて痛感させられる。労働者の大部分を占める中小企業の産業保健推進への社会的支援が必要である。産業医の選任については、事業主の責任のみに任せず、労・使・官での財政負担も含めた協同体制で行っているヨーロッパ型のほうが公的専任となりベターである。中小企業は含まれないが韓国でも似た体制がスタートしている。
 ある県の産保センターの所長が、健診センターで沢山の事業所の産業医を引き受け、営利目的な事業を展開していると憂いていた。産業保健がますます重要になってきている昨今、事業主の承認の下での活動になりかねない産業医の立場を公的な立場に近づけるべき時期である。この春の産保センターの所長会の資料に「上医医国」とあった。本部の心はどこにあるのであろう?

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