【所長のコラム】/鏡森定信

男女に明快な境界線はない -生物学的多様性とLGBT―

 性転換後のトイレの使用が訴訟にまでなっている。
NHKのヒュマニエンスによれば、生物学的には男女の性別には明確な境界線はなく、私たちは法律的に出生2週間以内に男女の違いを、主に外見上、すなわち性器の外見に従い届けられているに過ぎないという。その番組には、生来男性器が小さく男としてしっくりいかなかったので、ついに20歳代後半で性転換を宣言したというゲストも出演していた。
 専門家によれば、性はグラデーション、つまり典型的な男から典型的な女まで連続しており、男女区別の明確な境界線はないという。外見上男で卵巣を持っている人も、またその逆の人もあり得るという。その形態も機能も様々であるから多様な性が存在することになり、生物学的に性別を決め難いことになる。
 そういえば血圧にも血糖値にも病気と決める明確な境界は無く、境界型というグレイゾーンとも言える領域を設けて対処している。
 LGBTの人たちへの差別は間違いであり、私たちはそのような人たちの人権を尊重し倫理的にふるまわなければならないと諭される。しかし、このような見解は偏見に基づく同情論であってはならない。性別から見た人の多様性であり、社会の認知と包摂が進んでいる。

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