在郷軍人病から新型肺炎を思う

新型コロナウイルス感染による肺炎が世界中を騒がせている。クルージング客船の中、空気経路で感染が広まったことをうかがわせ、「在郷軍人病」を想起させる。
1976年7月、米国東海岸のフィラデルフィアのホテルでの米国在郷軍人の総会後,参加者に死亡率が15%に達する肺炎が多発した。一般的な肺炎はペニシリン系抗生物質が有効だが、これには無効だった。患者の検体から未知の菌が発見され、米国在郷軍人会(American Legion)の名を取って,Legionella pneumophila(在郷軍人病菌;通称レジオネラ菌)と命名された。

この菌は元来土壌中の常在菌だが、ホテルの冷却塔に舞い込んで繁殖し、その冷却塔からの循環水の飛沫が、近くのエアコンの空気取り入れ口から吸引され、各部屋のエアコン吹き出し口から散布されて、多くの人々がレジオネラ菌の暴露を受けた。この菌は温泉水中にも常在しており、非衛生的な条件下で増殖すると入浴時の水滴吸引でレジオネラ肺炎を起こすことがある。診断がつかないと有効薬を使えず死に至る。この菌によるが、熱発や倦怠感などで治るのはポンデアック熱と呼ばれている。ある入浴施設で玄関に足浴槽を作ったが、余りにもレジオネラ菌の増殖が激しいので閉鎖したことがある。

大型客船での感染源隔離と伝搬経路の遮断には、病原菌の専門家、環境管理(今回の場合はビルメインテナンスなど)、危機管理などの総合的対応チームの必要性が改めて認知された。(2020年3月号所長コラム)

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