【所長コラム】鏡森定信

熱中症の労災認定に役立った健診データ

アスファルトをスコップで均す作業を長袖、長ズボン、安全靴、軍手、ヘルメット等を着用し、していた7月21日の午後4時すぎころ、体調不良を訴えて横転し、心肺停止状態となったケースである。救急車で帝京大附属病院に搬送されたが、その日の午後6時51分に死亡した。労災が認められず裁判となった。会社は、当日は朝食及び昼食で塩分補給しており、また水分を自由にとれるようにしており、心筋梗塞による死亡と主張したが、裁判では熱中症による労災となった。このケースでは脱水量の推定にヘトクリット値(Hct値;血液中の血球成分の量と液体成分の比率で%で示す)が使われた。脱水で水分が減少すると相対的に血球成分の割合が多くなるのでHct値は上昇する。水分欠乏量は、体重×0.6×(1-健常時Hct値/脱水後Hc値t)で推定された。このケース(平成16年の東京地裁)では、体重73.4Kgの労働者でHct値は健診時に42.7%、病院搬入時には46.8%に上昇していた。発症当時、約3.86Kg(73.4×0.6x(1-42.7/46.8)≒3.86)の水分喪失は体重の約5.26%に相当するとして、中等の脱水状態に陥っていたと推認した。健診データが役にたったケースである。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です