【所長のコラム】/鏡森定信

病室の窓からの「みどり」

 病室の窓から庭や森が見えることは患者の心理精神に良い影響を与える、また、森の近くに住むことが心身の健康に良いことなど「みどり」の効用については多くの報告がある(E Karjalanenら,2010.)。
 県内の森林セラピー基地( 大山、上市)の調査でも市街地に比較して森林内ではストレスホルモンの減少が確認されている。色彩心理学的には、「みどり」は視覚的刺激が少なく、心理的には鎮静・安定性を有し、心身の興奮を鎮める効果が強調されていが、一方では、心が沈んでいるときにはその回復をもたらす作用もあるので「中庸」の色と称される。そんなことからメンタルヘルスの面からも「みどり」はいろいろ利用されている( Van den Begら, 2005)。心身の悩みを有する人と連れだって森の小道を散策し悩みを傾聴する森林療法もある。また、森林など「みどり」の多い地域では狭心症や心筋梗塞が少なく、その傾向は狭心症や心筋梗塞を増やす喫煙、高血圧、高脂血症などを調整しても変わらなかった、精神的疾患も少ないとの報告もある(Wangら,2005)。心筋梗塞はストレス病とも言われる一面があるので合点がいく。森の中で事業所を開設したり、レストランを開いたりした人もいて、働く人にもおおむね好評である。SDGsでは、「緑の豊かさを守ろう」も唱道されている。労働衛生の面からも「みどり」の活用を推奨したい。

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