【所長のコラム】/鏡森定信

QR(Quick Return)短い勤務間インターバルと富山の産業医

 先日、運輸業における現行8時間の勤務間インターバルを9時間にする厚労省の審議会で異論が出て決まらなかったというニュースが流れた。EUでは11時間以上であり、これを下回るQRは安全健康上問題であるとして9時間に反対意見が出たようである。
 QRは、夜勤を含む交替勤務が多い職域では連続夜勤を少なくし、夜勤の後は特に避ける(ILO勧告)ことが必要である。
 夜勤の多い病院職員の追跡調査によれば、QR群はそれが無かった群に比べて新たに高血圧になる確率が2倍になり、これに夜勤連続回数が連続2回以上になるとその確率は3倍に上がったとの報告( Cho YSら、2020年)がある。また、QRの多かった群では、その後のQR回数の減少に伴って、本人や他者へのアクシデントが少なったとの報告(Vedaa .Øら)もある(高橋正也.産業保健21,2021.10.vol106参照)。
 紹介した運輸業の例では、努力目標を一応9時間に延ばし、連続夜勤明けには11時間を確保するといったような工夫も考えられる。協会けんぽの調査では、40~75歳の睡眠で休養が十分とれていない割合はここのところ富山は最下位群にある。この調査ではその割合は、働く女性や製造業で多くなる傾向にあった。「富山は共働き率や交替勤務のある製造業の就業率が高いためこのような結果になるのであろう」とのコメントされている。働き方改革では、QRを減らす具体策は各事業所に委ねられている。その際事業所の業態を踏まえた産業医の関与は大きい。

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