【所長のコラム】/鏡森定信

昨今のメンタルヘルス問題への産業医・産業保健職の向き合い方

 週刊医学会新聞(医学書院2023.10.2)に標記について参考になる現場経験のある3人の医師の座談会が載った。その要点をご紹介したい。なお、前提として、精神科の専門職にこの役割を丸投げするような「狭い対処」からの脱却が強調されていた。
①適性や能力に合わせて環境を変えていく働き方の理解
・メンタル問題を抱える人が増えており、その対応の一つとして職場で総合職優先ではなくジョブ型雇用を推進することが大事で、その立場で労働者の適正に気づき、異動や転勤について話し合える必要がある。転職は今後ますます多くなる。
②人事や管理職と一般職とを繋ぐ潤滑油となることの重要性
・メンタルへルス問題では、特に医療の範囲内だけでの対処では済まされないことが多くなる。そのため会社の就業規則やさまざまの行政・法学的判断基準に従うことが求められる。その際、企業の人事や管理職とのよきコミュニケーションが潤滑油となり、職場の健康につながるより包括的な体制の構築に繋がる。
③安易に発達障害と考えない
・発達障害と診断される事例が増えてきているが、「その人が問題」と考えるのではなく、「問題が問題だ」ととらえることが大事である。すなわち、対人関係やコミュニケーションが苦手というのは人の「特性」の一つであって、「障害」や「疾患」とのみとらえて対処しない配慮が大事である。小児期に診断されている場合を除いて、安易にこの診断名を使い対処することは避けるべきである。
 現在このような事案を抱えているか否かにかかわらず、このような視点から例えばストレスチェックなどを手掛かりに、職場のメンタルヘルスへ対応を見直してみてはどうだろう

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