【所長コラム】鏡森定信

ISO45001;労働安全衛生管理の国際標準

 ISO9001(品質マネージメントシステム)を皮切りに14001(環境版)、27001(情報版)と産業界にも国際標準が進んできた。しかしながら、その労働安全衛生版(ISO45001)は、ILOの合意が得られなかったこともあって、なかなか日の目を見なかった。2013年になって民のISOと政・労・使の3者からなるILOの両組織の合意がなり今年には実現しそうである。ILOの試算による世界の労働災害死亡者約230万人、死傷者約3億1,700万人にも至る現状がそれを後押ししたようである(斎藤信吾;中災防・ISO企画推進室長)。

 このマネージメントシステムは、どの分野にも共通する部分と当該事項に関する要求事項で構成されている。労働安全衛生法の順守だけでは果しえない、例えば、トップマネージメントでは「安全衛生委員会が機能するように支援する」など13の要求事項、非管理職と協議すべき事項では「安全衛生方針の確立」など9項目、非管理職が参加すべき事項では、「リスク評価」など7項目を明示し要求している。

 企業理念に基づき従業員等への健康投資を行い、従業員の活力や生産性の向上等により業績向上や株価向上につながるとの期待で展開されている米国発の「健康経営」に対して労働安全衛生管理の構造的アプローチであるこのISO 国際標準の差異を意識したい。

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