【所長コラム】鏡森定信

「うつ」に有効な「和温療法」に準じた入浴

 和温療法(WAON Therapyとして循環器の世界の医学書にも載っている)は、鹿児島大学在職中の鄭 忠和教授(退職後その研究所を開設)の発案である。60℃、15分のサウナで深部体温を1℃以上上げ、その後発汗で失った水分量を補給し30分の保温安静を行う方法である。かなり前になるが、私が会った時には、教授は心不全や間欠性跛行(下肢動脈硬化症)の他に気分改善にも効果があることをすでに言及していた。心不全の患者では、入浴が心臓に負担になるのでまずいが、一般人にはサウナを入浴に替えて行うことを奨めていた。
 ここ2~3年、アメリカやフインランドなどからも和温療法に準じた入浴がうつ病の改善に有効であることが二重盲検法によって報告されている。
 また、ヒートショックたんぱくの研究者である伊藤要子(薬学博士)氏は、体温を1℃以上上げる入浴は、このたんぱくの血中濃度を上げ、入浴3日後あたりから徐々に低下していくことを報告している。
 忙しい日々を送っている働き盛りには、入浴の度にこの入浴法は難しいが、週に1~2回は実行して欲しいものである。何かと気持ちが塞ぐ冬季、心身の健康のために活用して欲しい入浴法である。

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