【所長のコラム】/鏡森定信

震災直後から避難地で温かい食事や入浴が提供できる国

 能登半島地震から4か月が過ぎた、いまだに避難生活を余儀なくされている方が4000人を超えるという。震災直後、寒さにふるえ、温かな飲食や入浴などは望むべくもない状況に耐える常態が、我が国の現状である。地震の多いイタリアで震災後から速やかに温かい食事や入浴を提供できる体制が備蓄されていることを知った。
 日本災害食学会の笠岡(坪山)宣代氏の視察記によれば、イタリアではパッケージとしてキッチンカー、食堂、トイレ、シャワー、ベッド、テントが公費で備蓄され、発災後短時間で被災地に届け設営する仕組みができているという。その管理・運用はあらかじめ訓練を受けた各地域のボランティアが担っているそうである。厨房で温かい食事を提供することに専念するボランテアなどその役割分担も決めているという(日本災害食学会誌、2020年)。
2009年4月、約63,000人が家を失ったイタリア中部ラクイラ地震では、初動48時間以内に6人用の電化されたエアコン付きの約10畳のテント約3000張(18,000人分)が設置され、最終的には約6000張(36,000人分)が行きわたった。各テント村には温かな食事を提供する食堂は勿論開設された。
大地震の度に、国民に備えの自己努力が喧伝され、ボランテアの善意に大きく依存し場当たり的な面が多く、混乱する我が国とは比較にならない体制がイタリアでは組織されているという(イタリア、地震、 食事のキーワードの検索で見れる)。
 今後さらに大きな地震が予想されている我が国、公共施策として予め備蓄された震災後対策の整備を望む。

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