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研究・調査

富山産業保健総合支援センターの調査研究コーナー

平成28年度
社会福祉施設における職場環境の現状と課題 〜温熱・湿度環境を中心に〜
主任研究者  富山産業保健総合支援センター 所        長   鏡森  定信
共同研究者  富山産業保健総合支援センター 産業保健相談員   松永  康弘
       富山産業保健総合支援センター 産業保健相談員   藤澤  貞志
       富山産業保健総合支援センター 産業保健相談員   小杉  由起
       富山産業保健総合支援センター 産業保健相談員   小早川忠行

1 はじめに

社会福祉施設(介護施設)における労働者の安全衛生対策の一環として、労働者の熱中症予防とインフルエンザ
など呼吸器疾患の予防のため、温熱・湿度を中心に労働環境の現状の分析と問題点を明らかにし、その対策も
検討することを研究目標とした。


2 方法
(調査方法)
 (1)調査研究
  〓施設対象
  平成28年5月に郵送法による無記名式質問紙調査を実施した。内容は事業場の属性、夏季の暑さに対する
  認識と対策、冬季の寒さと乾燥とインフルエンザに対する認識と対策、希望(自由記載)とした。(分析対象)
  県内の介護施設(199施設、特別養護老人ホーム、介護老人健康施設など)の施設長を対象にとした。
  〓スタッフ対象
  特別養護老人ホ〓ム1施設において、スタッフ90名を対象に上記に準ずるアンケ〓トを行った。

 (2)実地測定
  〓WBGT計(京都電子工業(株)社製WBGT213B)を施設内の希望部署(2〜4か所、労働者が実際に働いて
  いる所)に朝設置し夕方に回収した。
  〓1介護施設における平成28年5月から29年3月までの月毎の複数部署での温度・湿度などの測定を行った。
  〓同1施設での夏季と冬季のWBGT値等へのよしずなどの影響評価:窓によしずなどの遮光をして、WBGT値な
  どへの影響を評価した。
  〓同1施設で行った冬季の加湿器による湿度の変化の測定(大広間と居室):施設で使用中の加湿器を用いた。
  〓同1施設で暑さ対策を依頼された浴室での複数点での温度測定と発熱源の推定と暑さ対策の提言を行った。


3 結果
 (1)調査研究
  75施設のアンケ〓ト結果:暑さ対策の必要な部署および蒸して困る部署は厨房、浴室、事務室の順。夏に暑さ
  対策は、専用のエアコン設置、窓のロールカーテン・ブラインドの順。冬の寒さ対策は専用のエアコン設置、中
  央コントロールの暖房の順。冬に乾燥して困る場所は、居室、共同生活室、事務室の順。加湿対策は加湿器が
  最多。温度・湿度・WBGTは、72%の施設で測定され、63%で対策に利用。インフルエンザ対策では、ワクチン接
  種の実施または補助金は95%で、発症者の出社禁止86%(有給44%)で行われ各施設の意識の高さが見られ
  た。

 (2)実地測定結果
  〓33介護施設における温度・湿度などの測定結果(夏季-29、冬季-8)及び〓1介護施設における平成28年5
  月から29年3月までの月毎の複数部署での温度・湿度などの測定はおおむね問題になる所はなかった。
  〓同1施設での夏季と冬季のWBGT値等へのよしずなどの影響評価について夏季は、よしずなどの遮光法で、
  WBGT値などの低下を見たが、冬季では却って気温の上昇を妨げた。
  〓同1施設で行った冬季の加湿器による湿度の変化の測定(大広間と居室)につてはインフルエンザの予防域
  (絶対湿度≧11g/m^3)には到達できなかったが、相対湿度は上昇傾向を示していた。 
  〓同1施設で暑さ対策を依頼された浴室での複数点での温度測定と発熱源の推定と暑さ対策の提言:スタッフ
  の事情聴取と合わせて、発熱源を推定し、スポットク〓ラ〓とよしずを提案した。


4 研究成果の活用予定
  学会(日本産業衛生学会など)の発表や産保センター〓主催のセミナ〓での講演、県内の介護施設への報告
  書の送付(協力していいただいた施設様には施設毎の測定結果と提言も送付)


5 考察
  県内の介護施設での温熱環境は、アンケ〓トでは施設長・スタッフともに意識が高く、インフルエンザ対策も既に
  取られていた。実測では、おおむね良好であり、夏季には一部「浴室」でWBGTが高い所が見られたので、作業時
  間を短縮することで対応可能と考えられた。冬季の湿度が低めであり、インフルエンザ予防域にある所は殆どな
  かった。
  夏季のよしず・カ―テンなどでの遮光によりWBGT値・気温の低下効果があるので省エネに活用が可能、冬季は
  加湿器が湿度上昇に効果はあるが、インフルエンザの予防域までは到達できなかった。

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