炭素が直鎖状に結合した,炭化水素系の有機溶剤のグループがあります.炭素数が少ないとガス状ですが(炭素1個メタン,2個エタン,3個プロパン,4個ブタン),5個以上となると液体となり,溶剤として使用されます.次の4種類が使われています.なお,しばしばノルマル(n-)を省略します.「蒸気密度」は空気を1とした相対蒸気密度であり,4物質ともに空気より重いことになります.
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炭素数 |
性状 |
比重 |
蒸気密度 |
引火点℃ |
発火点℃ |
マウス麻酔濃度* ppm |
許容濃度ppm |
ペンタン
n-pentane |
5 |
無色液体 |
0.6 |
2.5 |
-40以下 |
260 |
130,000 |
300 |
ヘキサン
n-hexane |
6 |
無色液体 |
0.7 |
3.0 |
-22 |
223 |
42,000 |
40 |
ヘプタン
n-heptane |
7 |
無色液体 |
0.7 |
3.5 |
-4 |
204 |
16,000 |
200 |
オクタン
n-octane |
8 |
無色液体 |
0.7 |
3.9 |
13 |
210 |
8,000 |
300 |
*「化学物質の危険・有害便覧」中央労働災害防止協会編,平成3年,p691
ペンタンは,低沸点溶剤,ガソリンの一成分としての燃料,化学薬品原料などの用途,ヘキサンは油脂の抽出溶剤,塗料,接着剤などの用途,ヘプタンは油脂の抽出溶剤,塗料,接着剤などの用途,などです.オクタンは,溶剤として単独で使用されるよりは,工業ガソリン中に含まれ,印刷インキ溶剤,塗料の希釈剤,接着剤の溶剤などとして利用されています.いずれも引火・爆発の危険性があります.
毒性については,高濃度でいずれも麻酔作用があります.表に示したように炭素数が増えるほどその作用が強いとされています.特にヘキサンについては,多発性神経炎が発生した歴史があり,許容濃度が低く設定されています.また,ヘキサンは有機溶剤中毒予防規則にも取り上げられており,これらの中ではいちばんなじみのある溶剤となっています.
(「化学物質の危険・有害便覧中央労働災害防止協会編,平成3年」,「新版溶剤ポケットブック,オーム社,平成6年」,「許容濃度提案理由書,日本産業衛生学会編,中央労働災害防止協会」などより)