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産業保健Q&A(回答)

Q:私の働いている事業場ではアーク溶接を行っていますが,どのような危険がありますか.また,その対策について教えて下さい.
【回答者】富山産業保健推進センター所長 加須屋 實
回答
アーク溶接の際に発生するおもな有害因子は3つあります.


1.ヒューム:じん肺の原因です.粉じん作業者のじん肺有所見者の内,約24%が溶接作業者が占めるといいます.鉄の溶接が多いので酸化鉄をおもな原因とする溶接工肺が主要なものですが,亜鉛を含む塗装をした鉄板の溶接や溶断の場合には亜鉛による金属熱の発生もあります.含まれている金属や塗装の種類によっていろいろなヒュームが発生することになります.

2.ガス:一酸化炭素は,炭酸ガスの熱分解と溶接面の炭素の燃焼により発生します.したがって炭酸ガスアーク溶接(MAG溶接)が要注意です.アーク溶接作業で一酸化炭素中毒も発生していますので,「アーク溶接作業における一酸化炭素中毒の防止」(H16.9.21,基安化発第0921002号)が出されています.他に大量のオゾン,窒素酸化物なども問題になります.

3.紫外線:眼の表面で吸収され,網膜までは達しませんが,角膜炎,結膜炎を起こします.紫外線角膜炎,電気性眼炎とも称されます.角膜炎は重症の場合浮腫・壊死を起こし,視力に重大な影響を及ぼすことがあるので特に危険です.

以上の他に火花や熱による障害があります.


安全衛生上の対策は,局所排気装置などの環境対策はもちろんですが,保護具として次のようなものが必要です.

1. 呼吸用防護具:ただの防じんマスクではなく,「防じん+防毒」マスクが必要です.特に狭い空間や換気の悪い環境では送気マスクが必須です.

2. 目ならびに顔面保護具:防護めがね,しゃ光保護具,溶接用保護面などを適切に着用します.

3. 保護衣服:手袋,前掛けなど,全身の皮膚を保護する必要があります.


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