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産業保健Q&A(回答)

Q:ベンジンを使って染み抜きをしています.ときどき吐き気がしたり,ふらふらした感じになったりしますが大丈夫でしょうか.
【回答者】富山産業保健推進センター所長 加須屋 實
回答
大丈夫ではありません.
 ベンジンは石油ベンジンともいって,有機溶剤の一種です.有機溶剤中毒予防規則の第3種にあげられています.
 ベンジンはn-ペンタンとn-ヘキサンを主成分とする沸点35℃から80℃の石油の蒸留物ですが,少量のベンゼン(似た名前だがベンジンとはまったく違う物質),トルエン,キシレンを含みます. n-ヘキサンはかって末梢神経炎を引き起こした有機溶剤です.ベンゼンは再生不良性貧血を起こしたり,白血病の原因ともなる物質ですが,現在は有機溶剤としての使用は禁止されています.トルエン,キシレンもシンナーの成分として有害性が高い有機溶剤です.
 しかし,染み抜きでの使用の場合,それぞれの毒性というよりも,有機溶剤全体に共通する麻酔作用(中枢神経抑制作用)を問題にするべきでしょう.第3種有機溶剤は混合溶剤なので,管理濃度は定められていません.したがって,環境測定に頼ることなく,次のような麻酔作用にかかわる症状が出たならば危険,と理解して下さい.
 吸入による症状:めまい,悪心,嘔吐,頭重,頭痛,酩酊様症状,皮膚冷汗,口渇,顔面紅潮;さらに重症となると,振戦,呼吸困難,脈拍微弱,瞳孔散大,精神錯乱,昏睡.
 対策は,第1に換気をよくすること.できれば局所排気装置を設置すること.第2に,有機溶剤用の防毒マスクを着用して作業すること.第3に,上記の症状が出たら,中毒症状が出たということなので直ちに作業を中止すること.
 染み抜き作業は小さな職場で行われていることが多く,使っているものの有害性についての理解が不足していたり,環境対策や健康管理が不十分なことが多いので十分注意して頂きたいと思います.


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