【リレーコラム】⑨

精神科における診断について(2)

前回、精神科における診断の問題点について述べた。今回は、世界的標準として使われている米国精神医学会の「精神疾患の分類と診断の手引」の最新版であるDSM-5-TRについて述べたい。1980年に画期的な診断基準としてスタートして以来、研究結果を評価し、改定を繰り返してきた結果、2022年にDSM-5-TRが発刊された。DSMの進展の中で、スペクトラム症を取り上げるようになり、「自閉スペクトラム症」と「統合失調スペクトラム症」が掲載されている。スペクトラムとは、連続的なバリエーションを意味するので、研究するときは正常群の同定が困難になり、正常と異常の判別に今まで以上に注意する必要がある。もうひとつは、この診断基準の大きな要点である「その症状は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている」の項目の評価にも注意が必要である。この要点を考察するには、医学的視点と社会的視点が必要で、障害程度を評価することが不可欠であるため、診断にあたってバイアスになりやすいと思われる。今後より研究が進み、この2点を明確化することが望まれている。このように、精神科における診断には不確実性が付きまとっている。この点について、神田橋條治は、「精神科診断面接のコツ」の中で、精神科診断の機能として、1)医師が経過を見通し、処置法を決定する指針としての機能 2)専門家の間の共通言語としても機能 3)患者に説明するための道具としての機能の3項目を挙げている。本来は第2機能が確立されれば問題はないが、当面は第1及び第2機能を勘案しながら、根気強く経過を診ていく必要があると思われる。

(眠り猫/木戸 日出喜(富山産業保健総合支援センター産業保健相談員)2026年1月)

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