パパイヤヌードルを製造販売した地元の金属会社
戦後80、史実に基づいたものとして昭和史の大家、保坂正康氏も評価された石破談話は、戦中生まれの小生にとっては印象深いものであった。この前首相でもう一つ私の気を引いたのが、「我が国の経済の底力は地方に根を張った中小企業にあり」と強調されていたことである。しかし、労働者数、企業数では大勢を占めるものの稼ぎ額では大企業にかなわず、企業活動の国際化の時代に底力がそこにありとは?と思ってもいた。ところが、目下私が興じている「薬膳」との関連で標記のような地場産業について見聞し感じるものがあった。
大量に廃棄されていたパパイヤの未熟の実や葉の存在から、地元の金属会社が当地の歴史ある名産の島原ソーメン業者の助けも借りて試行錯誤の末、パパイヤヌードルの製造販売にこぎつけたのである。
富山で企業史の会社を起業した森田弘美氏は、経済学博士を取得する研究過程で『資本の性格と地域制度 富山・新潟・福島の近代電力産業に関する比較分析』日本経済評論社(2024 年)を上梓した。他の2県が外生産業に頼ったのと違い、北前船で隆盛した富山の内生産業の資本を紡ぎながら地場電力産業の形成過程をそれに関わった先達とともに論説している。
地域再生を唱道しない行政や政治家・産業人はいないが、その方策として企業誘致が主張されることが多い。この著書は、安易にこの方策に頼ることの警鐘も包含しているというのが、私の読後感である。地域の歴史や文化、産業を丁寧に紡ぐことで底力のある企業活動の展開を理想としたい。
(Dr.K/鏡森 定信(富山産業保健総合支援センター産業保健相談員)2025年12月)
