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研究・調査

富山産業保健総合支援センターの調査研究コーナー

平成8年度
富山県における女子労働者の生活と労働環境に関する研究
主任研究者 富山産業保健推進センター相談員  北川 豊子
共同研究者         〃   所長   広瀬 友二
                〃      鏡森 定信
                〃      橋本 栄一
                〃      市堰 英之
                〃      柳下 慶男
                〃      篁  靖男
                〃      藤澤 貞志
                〃      金  清 
      富山医科薬科大学保健医学教室講師 山上 孝司

1.はじめに
 富山県では、女性の就業率が50%を超え、女性の勤労意欲と永続的な職業感が高まっている。全国的にみても男女雇用機関均等法、育児・介護休業制度が法制化され女性労働者の環境が整備されつつあるが、一方では労働者の高齢化と若年労働者の減少という実態を鑑みると、女性労働者への依存と期待が大きく、各企業においてどこまで実施されていくかは疑問視されている。そこで、女性労働者の生活・勤務形態・労働環境を把握し、適切な対応と指導及び援助が求められている。今回は富山県の中小企業に働く女性労働者の生活と労働環境等の実態を事業主及び従業員の両者に対して調査することにより、問題解決型の支援と指導についての知見を得ることを目的とした。

2.対象と方法
 富山県西部に位置する中小企業(おおむね従業員50〜300人)28社に対して、

事業主に対して女性労働者へのアンケート形式で実施。
従業員に対して女性労働者の生活・労働意識・労働環境の実施調査を無記名によるアンケート形式で実施。
 対象の28社中、事業主は配布28社中27社(96%)から回答が得られ、従業員からは配布した28社全ての企業の従業
員から合計2236名分の回答が得られた。

3.結果と視察
 〈3.1事業主に対する調査結果〉
 女性の従業員が50%以上を占める企業が対象企業の3分の1の9社であったが、係長相当以上の役職の女性がいる企業は役半数の14社で、そのうち役職の15%以上を女性が占めているきぎょうはわずか1社であり、女性の身分の低い実態が明らかとなった。育児休業制度についても実施していない企業が6社(22%)あり、また実施していても過去一年間に育児休業制度を利用したものがいない企業が半数以上の14社もあった。また、育児休業制度以外の制度になるとあまり実施されていない現状であり、例えば介護休業制度は7社(26%)の企業でしか実施されておらず、育児や介護のための環境が整っていない現状であることが判った。

 〈3.2従業員に対する調査結果〉
 性別では女性が1420(64.4%)人で男性が785(35.6%)人であった。年齢階級別にみると、30歳未満は619(28.1%)、30歳代は529(24.0%)、40歳代は659(29.9%)、50歳以上は395(17.9%)人であった。既婚者は全体の約4分の3の1535人であった。また、独身者でも独身を希望するものは2%に満たず家庭を形成して活動する意識は非常に高かったことから、女性に対する支援制度の必要性がうかがわれたが、実施されている制度の実態の調査結果は以下のような実施率であった(従業員の回答なので事業主の回答率とは必ずしも一致しない。なお、当てはまるもの全ての設問に解答してもらった)。


妊婦の勤務時間の短縮制度・・・・・・・・・・・・ 7.8%
妊娠中、分娩後の通院休暇制度・・・・・・・・・・16.1%
妊娠障害(つわり等)休暇制度・・・・・・・・・・ 8.0%
職場内保育(託児)制度・・・・・・・・・・・・・ 4.9%
看護・介護休暇制度・・・・・・・・・・・・・・・34.0%
看護・介護のための短時間勤務制度・・・・・・・・13.5%
介護のための臨時支出の融資制度・・・・・・・・・ 5.9%
介護に関する情報提供・・・・・・・・・・・・・・ 4.8%
介護者の斡旋(派遣)制度・・・・・・・・・・・・ 2.0%
介護講習・研修の実施・・・・・・・・・・・・・・ 3.8%
出産のための退職した女性の再雇用制度・・・・・・ 8.3%
育児休暇制度・・・・・・・・・・・・・・・・・・47.4%

 これらの結果から、妊婦に対する対応があまりなされておらず、また育児に関する対応も非常にわるい現状であり、かつ看護・介護に対する企業の制度が不充分である事業上が多いことがうかがわれた。
 また、職場で女性の差別に関しての調査結果は、

募集や採用人員で女性は男性より不利である・・18.1%
女性が配置されない職種がある・・・・・・・・18.9%
女性の昇進、資格が遅い(望めない)・・・・・40.8%
動機の男性と賃金、昇給の差がある・・・・・・41.6%
女性には社内研修、教育訓練の咲き諧が少ない・19.6%
女性は転勤などの人事移動で不利である・・・・ 7.7%
中年以上の女性の就労に対する圧力がある・・・13.4%
女性には出張、視察などの機会が少ない・・・・19.4%
定年の年齢に男女の差がある・・・・・・・・・ 4.4%
結婚退職、職場結婚退職の慣行がある・・・・・ 2.4%
出産退職の慣行がある・・・・・・・・・・・・ 2.7%
お茶くみ等の雑用は女性だけがする・・・・・・20.1%

という回答率であり、女性労働者が職場において男子に比べて非常に悪い労働環境と待遇であることがうかがわれた。
 一方、事業所における女性の職業意識工場を図るための方策の希望についての調査の結果、

女性の責任ある仕事の付与・・・・・・・・・・41.4%
女性の管理職への積極的登用・・・・・・・・・18.8%
女性に対する教育訓練の充実、強化・・・・・・26.9%
女性の出張機会の拡大・・・・・・・・・・・・ 8.7%
会議や打ち合せ等への女性の出席機会の拡大・・17.6%
女性のリーダー制やプロジェクトの導入・・・・ 8.2%
女性に対する偏見をなくす意識啓発の実施・・・18.0%
広く女性の職場拡大を行う・・・・・・・・・・20.5%
女性が働きやすい機器や設備の導入・改善・・・34.4%

という回答率が得られ、女性の職業意識や職業環境を改善するための方策が事業主に対して多く望まれていることがうかがわれた。

4.まとめ
 以上のように、事業主及び従業員に対する調査の結果、女性従業員の労働環境が法的な整備に比べてはるかに遅れている実態が明らかとなった。
また、同様な設問で事業主と従業員の間に回答率の差から両者の認識に差異のあることがうかがわれた。従って、今後は事業主と従業員の双方が同様な認識をもった上で、現在の女性労働者の実態を打開するために労使双方が一致協力して努力していかなければならないことが示された。

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