がん検診禍を避けるために -就労と予防の両立支援-

血液1滴で多くのがんが見つかる! 最近よく見かける魅力的なキャッチフレーズである。がんの発見率99%などと言われると目が眩む。しかし、がんに罹っていなくても陽性になる疑陽性についてはあまり強調されていない。ある事業所でこの種の検査を健診に入れたいとの相談を受けた。がんが心配で病院に来る患者ならともかく、疑陽性が0%の検査は一般には無く、健康で働いている人でも何人かは陽性になり、精密検査で例えばCT検査を受けると被ばくもあるので、産業医と相談して高危険群だけにしたらと提案したことがある。

がんに罹っていない人が疑陽性でCT検査を受ければおおよそ10mSvの被ばくがある。原子力・放射線作業者は年間50mSv, 5 年間で100mSvが上限となっている。発がんの危険がより大きくなる被ばく線量は100mSvとされている。しかしながら、それ以下でも被ばく線量の増加に比例して発がんの危険は高まるとの見解もあり、避けるに越したことはない。CT検査など医療機器の普及が著しい我が国に対して医療被曝の発がん危険を警告する論文も出ている。

産業医と連携し、医学の進歩を取り込んだ安全な予防並びに早期発見早期治療の施策の展開が事業所でも望まれる。

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