【所長コラム】鏡森定信

一般健診が2年に1回のフランス ―令和の産業保健を考える―

 フランスでは一般健診を毎年から隔年実施にして職場リスクの軽減に重点を移行しており、韓国では、50~300人の事業所の産業保健の国の責任体制をさらに進め50人未満の事業所を対象に労働者健康センターの地域別設置と産業医を長とした看護職,衛生技術者,心理士,人間工学担当者を必ず置くチーム体制の整備など、予防を重視した施策が進行している。わが国でもストレスチェックや治療と職業生活の両立支援などその流れに沿って施策が展開されているが、まだ異常発見と治療に偏っている。
 一般健診でも、医師の意見書に対する監督署の指導が強化されており、これが予防を後押しすることが期待される。しかしながら、健診異常の大半が高脂血症を最頻とした慢性的な生活習慣病で占められている。したがって医師に職業生活の持続に絡めた意見書を毎年と言われても躊躇せざるを得ない。がん検診でも異常なし者には検査を毎年は奨めないものも出てきている。健診の頻度も含め検討が必要であろう。わが国の労使関係のいびつさからくる要因が大きく影響しているが、過重労働・過労死から別離すべく長時間労働やハラスメントに対する規制を整えてきた平成から、令和ではそれを踏まえた予防的な産業保健の展開が望まれる。

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