【所長コラム】鏡森定信

見えない作業リスクの管理

 先月、当センターの産業医研修会のテーマは、高岡地産保主幹の杉森先生の「放射線防護と産業医学」で、時宜にかなったテーマであった。工業分野の放射線照射の50%以上は半導体加工に使われ、最高質品は原子炉で製造されているという。他に、コンクリートや金属の内部探査(非破壊検査)、高温の金属板や濡れた紙などの厚さの測定、車のタイヤやプラスチック等の弾力性や耐熱性を高める品質改良のための照射、また農業分野でも広く使われていることが紹介された。新たに原発事故の除染作業もでてきた。労働安全衛生では月、年、そして生涯暴露量の規制が示され個人測定も行われている。
 しかし、測定結果は各人に通知されるが、個人情報保護法のために、線量測定サービス会社同士で測定データを受け渡しし個人暴露を集積することはできない。事業所をまたがるような暴露の集積は実際には例外的である。当該機関に委託可能であるが、事業所は暴露線量記録を30年間保存しなければならない。学術会議は国の責任で一元管理すべきと提言している。私が40年前いた英国では石綿障害について一元管理がなされていた。我が国では、じん肺法で一部それが進んでいるが、生涯暴露が問題となる見えない作業リスクの一元管理は急を要す。

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