【所長コラム】鏡森定信

過労死と禁煙対策にみるリオ「予防原則」からの乖離

 最近の一部プロフェッショナルの労働時間規制緩和や小規模事業所における受動喫煙を許容するような施策は、いかなる労働にも適用されるべき日々の労働時間の制限と誰に対しても回避されるべき受動喫煙の命に係わる有害性に目をつむるものである。
 国際的には、1992年、リオ・デ・ジャネイロで開催の「環境と開発に関する国際連合会議」で合意された、「環境と開発に関するリオ宣言」の第15原則から乖離していると言わざるをえない。この原則には、
 “環境を保護するためには、予防的な取組方法が各国の能力に応じてそれぞれの国で広く適用されなければならない。深刻な、あるいは不可逆的な被害のおそれがある場合には、完全な科学的確実性の欠如が、環境悪化を防止するための費用対効果の大きな対策を延期する理由として使われてはならない”(環境省ホームページ) と謳われている。
 長時間労働や喫煙は職場環境上の大きな今日的問題で、まさに深刻な、あるいは不可逆的な被害をもたらすおそれが十分にある。各労働者にとって費用対効果の大きいものである。
 社会経済的理由でこれらの施策が不徹底になることがあってはならない。

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