【所長コラム】鏡森定信

職場の主治医である産業医の出番

-健康管理手帳取得と肺の悪性腫瘍等の労災補償-

 今年度の職場の安全・衛生では、「建築物等の解体時等の石綿ばく露防止対策及び石綿製品の全面禁止の措置を徹底するとともに、健康管理手帳制度について広く周知を図る」が重点事項に入っている。石綿ばく露歴を示す「両下肺野の不整形陰影又は胸膜肥厚(単純X線撮影で両側横隔膜上の卵殻様石灰化が最も典型的で増えている所見)」に加えて、石綿のばく露職歴があれば、石綿健康管理手帳を取得して年2回の検診を受けることができ、肺の悪性腫瘍(ガンや中皮腫)や指定合併症も労災補償となる。

 じん肺有所見者でも、離職後は健康管理手帳を取得して毎年検診を受けることができ、肺ガンを発症した場合の補償制度も整備されている。じん肺所見があれば、特段の事情がない限り肺がんは労災補償の対象である。

 以上述べたことは、検診機関や病院、専門医等においてもまだまだ周知徹底が進んでいないために、該当者が健康管理手帳を取得していなかったり、肺の悪性腫瘍や指定合併症への労災補償を逸していたりする事案が相当あるものとする推定している。

 健康管理手帳は申請しなければ取得できない。職場の主治医、産業医の役割は大きい。

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